デザインとアートの違い!広義と狭義も理解してビジネスへ応用しよう
かっこいいデザイン、美しいデザイン。
「デザイン」という言葉に関して、きっと多くの方は「見た目を整える」という意味だと捉えているのではないでしょうか。
プロダクトデザインやグラフィックデザインといった言葉に代表されるように、もちろん「デザイン」にはこうした意味が含まれています。
しかしながら、デザインとは本来の言葉の意味を考えると単に「見た目を整える」という意味だけに留まるのではなく、実はもっと奥行きがある言葉であることが分かります。
今回は近年になって日本でも注目されてきたこの「広義のデザイン」について、インターネットビジネスにこの考え方をどう応用するのかという部分も含めて解説をしてみました。
こうした「デザイン」の考え方は欧米ではすでに一般的になっており、これからの時代で確実にトレンドとなっていくものですので、ぜひこの機会に新しい考え方を身につけるつもりで理解しておきましょう。
Contents
広義のデザインと狭義のデザインについて動画で解説
デザイン≠アート
まず大前提として押さえおきたい部分はデザインはアートではないということです。
アートとは特に目的やターゲットがいるわけではなく、ひたすら芸術的、美術的な感覚によって創造されるものです。
アートはあくまでアーティストの自己表現であって、どこまでも主観的であり、それが人に理解されるのかはどうかは問題ではありません。
一方でデザインには明確な目的やターゲットが存在します。
デザインとは人にものを伝えるための技術であり、作り手の意思を正しく受け手が理解できるようにするためのものです。
「明確な目的やターゲットがある」というところが肝で、それらを軸にして首尾一貫したものを作ることがデザインには求められます。
アートは好き嫌いの世界、デザインは良いか悪いかの世界と捉えてもいいでしょう。
広義のデザイン、狭義のデザイン
「デザイン」の語源は「計画を記号に表す」という意味のラテン語”designare“です。
抽象性が高いものを記号(“sign”)を用いて他のものと区別(“de”)できるように具体化していくこと。
ここからデザインとは本質的には、
問題の本質を掘り下げ、解決のための設計を行い、設計に基づいた見た目(表現)を作り上げ、問題を解決に導く事
出典:Basic Design Note
というふうに捉えることができます。
近年ではこれを「広義のデザイン」と呼び、英語では大文字で”DESIGN“、
「実際に形にしていく」という意味のデザインを「狭義のデザイン」と呼び、英語では小文字で”design“と表されます。
広義のデザイン”DESIGN”
目的を達成するための思考の枠組み、コンセプトの設計、実際の形に落とし込んで表現するまでの全ての工程のこと
狭義のデザイン”design”
設計したことに基づいて、実際にモノに形を与えること
「広義のデザイン」では問題解決を整理・分解し原因を特定するための思考方法や、コンセプト設定などの概念的な枠組み、さらにそれを実際に目で見たり手で触れたりできるまでに具体化するといった上流工程から下流工程まで幅広くカバーしています。
一方で、「狭義のデザイン」はこのうち実際に目で見たり手で触れたりできるまでに具体化する下流の工程を主に表します。
少し概念的で難しいですが、レストラン料理に例えると「どんなお店で、どんな人に食べてもらうために、どんなコンセプトの料理を作るのか」から考えるのが「広義のデザイン」、
単にレシピをもとに料理を作っていくところから始めるのが「狭義のデザイン」です。
こうしてデザインという意味をより深く捉えてみると、デザインが時折「問題解決」とか「設計」といった言葉に置き換えられる理由が分かってきます。
未来をデザインする、経営をデザインする、組織をデザインする、ライフスタイルをデザインするなどなど。
デザインは非常に多くの言葉と一緒に使われていますが、こうした「未来」や「経営」という言葉に対して単に「見た目を整える」という意味で「デザイン」を当てはめてみてもうまく意味が通りません。
しかしながら、「問題解決」や「設計」といった意味も含まれる「広義のデザイン」を当てはめてみると、「未来」であれば人々が安心して暮らせる社会の実現を描く、「経営」であれば収益構造を改善し、より競争力の高い企業へと生まれ変わらせるというように意味が通ります。
デザインとは、橋の形を考えることではなく、向こう岸への渡り方を考えることだ
-ディーター・ラムス
まさにこの言葉は「広義のデザイン」の意味の本質を表していると言えるでしょう。
広義のデザインの3つの要素
「広義のデザイン」は、「事の本質をとらえてそれを具体化していく工程全て」を指すので、何に対しても使える非常に守備範囲が広い言葉であると言えます。
このため、一見つかみどころがないように思えますが、実は主には次の3つのステップから成り立っていると言えます。
- 要件定義
- 設計
- 構築
それぞれは明確に線引きができるわけではなく、多少重複してしまっている部分もありますが、この3つに分けて捉えれば「広義のデザイン」について理解がしやすいはずです。
要件定義
デザインには明確な目的が存在し、デザインの出発点は、「こうしたい」「こうなって欲しい」という「想い(“desire”)」です。
そうした抽象的な人の想いや希望を、様々な思考ツールや問題解決のためのフレームワークを利用して整理・分解し、実現するための方法を模索していく要件定義もデザインに含まれます。
例えば、経営コンサルタントとしてある企業へ利益改善のための提案を行うとしましょう。
この時、その企業の担当者と意見を交わしながら利益が予想に反してうまく上がっていない理由はなんなのか原因を分析していきます。
売上が少ないのか、原価が高すぎるのか。
売上が少ないとしたら、製品の単価が低すぎるのか、製品があまり売れていないのか。
製品があまり売れていないのであれば、それは広告を出していないからなのか、営業マンの数が少ないのか。
このように問題を整理整頓していき、どこにその問題の真の原因があるのか、真に解決すべき問題は何なのかを様々な思考ツールなどを用いて分析を行っていきます。
あるいは家を建てることで考えるのなら、「こんな家にしたい」という想いを整理し、予算との兼ね合いを考えながら間取りなどを決めていく段階です。
「大型の冷蔵庫が入ってもキッチンが広く使えるくらい」「駐車スペースはワンボックスが入るくらい」というように、ここで一度全ての要件をはっきりさせないまま図面への落とし込みを行うと、後から「そう言えばあれも必要だった」「あれはやっぱりいらなかった」というように途中で頻繁に設計を変更することになってしまいます。
あるいは、もしも設計が終わって実際に工事が開始していたら、今更変更したいといっても不可能なことが多いでしょう。
そうした手戻りを避けるためにも、まず自分の考えや取り組む問題について「何を目的にするのか」徹底的に整理整頓をしておくことが重要です。
設計
そうして分解・整理した問題を一歩具体化していくのが「設計」の工程です。
プランニングと言っても良いでしょう。
先程の経営コンサルの例で言うのならば原因の分析が終わった後に、ではその原因に対してどのようにアプローチをしてどのように解決をしていくのか、解決策のコンセプトを決めていきます。
家であれば、整理整頓した「こんな家にしたい」という想いを反映させて実際に図面に落とし込んでいく段階ですね。
この段階をすっ飛ばしていきなり工事に着工してしまうと、間取りも何もかもぐちゃぐちゃな家が出来上がってしまいます。
工事をしている途中で早くも家が傾いてしまうかもしれません。
そうならないためにも整理整頓した情報を一段階具体化させて、コンセプトを固めるステップが必要になります。
まさに「全てのものは2度作られる」ですね。
構築
そして最後に実際に目でみて手で触れるように形にしていく「狭義のデザイン」です。
経営コンサルの例で言えば、お客さんに対して持っていくプレゼン資料のイラストを考えたりする作業にあたるでしょう。
ただレイアウトを調整して見栄えをよくするという意味に留まらず、どの順番で情報を伝えればより納得してもらいやすいのか、大事な情報はきちんとマークアップして目立たせているのかと考えることもデザインです。
家で言えば、実際に工事に着工して木材やコンクリートを使って家を建てていく段階ですね。
広義のデザインとインターネットビジネス
ではインターネットビジネスを行う上でこの「広義のデザイン」はどのように関係してくるのでしょうか。
要件定義:思考ツール
インターネットビジネスは頭脳労働です。
問題解決のノウハウやビジネスの知恵などの自分の頭脳を売り物にしていくので、あなた自身が優れた頭脳を持つことを意識しなければなりません。
そのためにはモレなくダブりなく問題を切り分けて問題の所在を明らかにしていくロジカルシンキングや、前提条件や論理的な道筋を無視して水平展開させることであっと驚くようなアイディアを出すラテラルシンキングなどの思考ツールを使いこなせるようになると良いでしょう。
このような思考方法を身につけることで、そもそもの目的をはっきりさせることができます。
デザインを行う上ではこの目的をはっきりさせるということが非常に重要で、これに沿って以降全ての作業を行っていくのでここの部分が後でブレないように「そもそもなんのためにやるのか?」ということをカチッと決める必要があります。
設計:情報発信ビジネスにおけるコンセプト設定
要件定義で目的が決まったら、今度はそれを1段階具体化していきます。
情報発信ビジネスで自分のサイトやブログを立ち上げる場合、そのサイトのコンセプトはなんなのか、どのような人がターゲットで、どんな言葉を使って人を集めるのか。
あるいは自分のキャラクターはどう見せていくのか、どのようなネーミングをしてどのようなブランディングを作り上げていくことを目標をするのか。
情報発信ビジネスではこうしたコンセプトメイキングが非常に重要で、ここをどう設定するのかどうかがライバルとの差別化ポイントにもなります。
サイトや企画のコンセプトは長い人であれば丸1ヶ月〜2ヶ月程度を使い、あーでもないこーでもないと考えて設定していきます。
コンセプトは今後の全ての方向性を決める非常に重要な部分であり、かつ後で舵を切り直して変更するのが難しい点です。
後で後悔しないためにもその時点でのベストだと思われるものになるまでとことん突き詰めて考える必要があります。
構築:Webデザイン
あとはその目的やコンセプトに沿って、それを実際に形にしていきます。
ここの部分でもまずは「それは本来の目的と合致しているのか?」を基準に置いて見た目を整えていきましょう。
例えば、シンプルなほうが美しいからといって白と黒の2色だけで文章を書くと非常に見づらいはずです。
ランディングページを作る際も、目的は「登録をしてもらう」ことのはずですので、まずはその目的を達成できるのかという視点で見た目を考えていきましょう。
もちろん、見た目が美しいサイトを作ることは大切です。
特にインターネットビジネスは「怪しい」「胡散臭い」と思われていることが多いですので、とりわけそのイメージを払拭するためにも見栄えがいいサイトを作ることは重要になってきます。
「メラビアンの法則」によると、人が初対面の人物を認識する場合に参考にする情報の割合は、話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合であるとされています。
このように事実として僕達は視覚から得る情報にかなりの割合を頼っていて、特に初めてのものを見る時はその傾向が強いことは押さえておくべきですが、それはやはり二の次です。
一番良いのは目的達成性と見栄えの良さが両立した、あらゆる意味で美しいサイトデザインを考えることですね。
全てのものにデザインは必要
ということで今回は「デザイン」という言葉の意味について「広義のデザイン」という観点から捉えていみました。
「広義のデザイン」を構成するのは主に次の3つの要素です。
- 要件定義
- 設計
- 構築
「デザイン」という言葉は非常に守備範囲が広い言葉です。
建築、庭園、ポスター、システム、組織、人生などなど、極論を言えば全てのものにデザインは必要になります。
この記事を見ているあなたもおそらく何かしらのものを「デザイン」しているでしょう。
よくありがちなのが、デザインとアートを混同していて、本来の目的を達成させることよりも見た目の美しさばかりにこだわろうとするケースです。
もちろん不快な印象を与えないためにもある程度見た目を整えるということは大切ですが、もしもあなたの目的が「自分のサイトから注文をもらって収益を出す」ことで、サイトの見た目が美しくなくても注文がバンバン入ってくる状態であれば別に見た目を美しくする必要もないはずです。
知らず知らずのうちに目的と手段がごちゃ混ぜになって手段が目的化するケースが多いですが、目的の部分はどこかにメモをしておくなりいつでも見れるようにして方向性を見失わないようにしましょう。