ラテラルシンキングの鍛え方!ロジカルシンキングとの違いは?
ラテラルシンキングは水平思考とも呼ばれ、数年前から日本でも流行り始めた思考方法です。
デザイナーなどのクリエイティブさが求められる仕事ではもちろん、ロジカルシンキングでは解決できそうにない問題もラテラルシンキングを使えば一瞬で解けてしまうなんてこともあります。
今回はこのラテラルシンキングについてロジカルシンキングとの違いや、実際のビジネスでラテラルシンキングが使用された例、またラテラルシンキング脳の鍛え方について記事にしてみました。
Contents
ラテラルシンキングについて動画で解説
ラテラルシンキングとは?
「ラテラルシンキングとは?」と聞かれて一言で答えるのはなかなか難しいですが、あえて言うのであれば「既存の枠組みから逃れてアッと驚くようなアイデアや解決策を出す思考方法」といったところでしょう。
ラテラルシンキングを語る上で非常によく使われるのが「13個のオレンジを均等に3つに分けるのはどうすればよいか」という問題です。
この子供たちがケンカにならないように13個のオレンジを均等に分けるためにはどうしたらよいでしょうか?
ぜひ、ここでちょっと立ち止まって考えてみて下さい。
答えがでましたでしょうか?
普通に考えると13÷3=4…1ですので、1つ余ってしまいますね。
考えられる方法としては「余ってしまった1つをまた3当分にする」、もしくは「最初からはかりを使って13個のオレンジを均等の重さになるように3つに分ける」などがあるでしょう。
しかし、余ってしまった1つを3当分にする場合はこのオレンジの実の数がちゃんと3の倍数になっている必要があります。
はかりを使う場合も、そもそもはかりがないといけないし、はかりを使っていちいち測っていくのもめんどくさいですよね。
そこでこれをラテラルシンキング的に考えると「ジュースにする」という選択肢が浮かびます。
これなら子供たちがケンカをすることもなく、しかも先程の2つの方法よりも簡単です。
ラテラルシンキングとロジカルシンキングの違い
ラテラルシンキングの特徴を理解する上では「ロジカルシンキング」と比較して見ると非常に分かりやすいです。
ロジカルシンキングはその名の通り「論理的な思考」のことです。
別名「垂直思考」とも呼ばれ、基本的にはA→B→Cというように物事を順序立てて整理し、論理を積み上げながら正解を模索していきます。
⇒ ロジカルシンキングを使った論理的で説得力のある文章の書き方
先程のオレンジの例で言えば、ロジカルシンキング的な考え方では「13個のオレンジを3人で公平に分ける」という目的に向かってひたすら垂直に論理を掘り下げていっていますね。
↓
「13÷3だとどうしても1つ余ってしまう」
↓
「ではこの余った1つをまた3当分すれば良い」
一方で、ラテラルシンキングとは前提や条件を自由に変更し、答えにたどり着くまでの過程・順序をすっ飛ばしていきなり答えにたどり着きます。
ラテラルシンキングは別名「水平思考」とも呼ばれ、A→Z→Ωというよう考えがにいきなり違う方向へジャンプしたりします。
オレンジの例題では「オレンジを加工してはいけない」という制約はどこにもありません。
僕たちは知らず知らずのうちに前提条件にかんじがらめにされて、非常に狭い範囲で物事を考えがちです。
特に自分の専門分野であるほど、その分野における常識やうまくいくための方法がこれまでの経験から身についてしまっています。
しかし、そんな時はこのようなラテラルシンキングを使うことで発想の幅を広げて、それまでには思いつかなかったあっと驚くようなアイデアを絞り出していくことができます。
ラテラルシンキングの重要性
近年、ロジカルシンキングに引き続きこうしたラテラルシンキングの重要性が高まってしますが、一体その理由はどこにあるのでしょうか。
主な理由としてあげられるのが近年企業間同士で繰り広げられる熾烈な競争です。
ロジカルシンキングの考え方では現在の状況から連続する形で、どのような変化を加え、競争相手に勝っていくのかということを考えます。
しかしながら、現在の状況をベースにし、誰がやっても同じ結果になることを良しとするロジカルシンキングではどうしても既存の競合他社と同じ戦略になりがちです。
そうなってくるとすでに規模が大きくて、使える資産がたくさんある大企業のほうが圧倒的に有利ですね。
そこで注目されてきたのがラテラルシンキングです。
ラテラルシンキングでは、既存の思考の枠組みから離れてライバルが思いつかないような今までにないアイデアを出すことで、市場を切り開いていきます。
ロジカルシンキング戦略をとった企業とラテラルシンキング戦略をとった企業で具体的な例としてあげられるのが、任天堂とソニー。
この2つの企業は共に日本を代表するゲームメーカーですが、実はその戦略は大きく違います。
ソニーは「PS3」などに代表されるように最先端の技術を導入し、いかに画面の解析度を上げるか、いかにユーザーがストレスなくゲームをすることができる環境を整えるかという主に機能面を追求しました。
一方で任天堂は「Wii」に代表されるように「家族でゲームをしよう」という発想でコントローラのインターフェイスの数を増やしたり、家族で遊べる用のソフトをたくさん発売したりするなど、老若男女問わずたくさんのユーザーに受け入れられるようにしたわけです。
CMを見ても、ソニーのほうは黒を使って高級感漂うイメージに仕上げているのに対して、任天堂は色とりどりで家族みんながリビングで楽しくゲームをプレイしている様子が流れます。
ソニーが既存のゲームの延長線上で「性能を上げる」という垂直の方向に進んだのに対して、任天堂はそれにとらわれずに「家族もユーザーに巻き込む」という水平方向へ展開をしたわけです。
ラテラルシンキングの鍛え方
ラテラルシンキングは「発想力」が非常に大事になってくるので、幾分か「天才の世界」や「運による」と思われてしまいがちですが、実はその思考方法にはコツがあります。
ここに書いてあるコツを頭に入れて世の中の物事を見てみると「あ、これなかなか斬新なんじゃないか?」というアイデアが浮かびやすく、ラテラルシンキング脳を鍛えることができますのでぜひ実践されてみて下さい。
スライドさせる
こちらもまた任天堂の例となりますが、持ち運べるゲームの祖先にあたるゲーム&ウォッチはラテラルシンキングから生まれました。
任天堂を世界的大企業へと押し上げた立役者の横井軍平氏は、電車の中で電卓をポチポチ叩いて遊んでいるサラリーマンを見て、これをゲームに応用できないかと考えました。
ゲームの概念を電卓という小さな媒体へとスライドさせたわけです。
また、インターネットの業界ではメールマガジンを利用したダイレクト・レスポンス・マーケティングが主流となっていますが、元々は「はがきで送られてくるDMを電子メールに使えないだろうか」とDMのアイデアを電子メールにスライドさせたことで現在の形になりました。
前提条件を疑う
「そもそもそれってなんで?」と前提条件を疑うところから始める方法も有効です。
例えば、今は一般的になったフリクションボールペン。
「ボールペンは消せない」という前提を疑い、「消せるボールペンがあってもいいじゃないか」というふうに考えてこのヒット商品は生まれました。
先程のオレンジの例も知らず知らずのうちに「加工してはいけない」という前提条件を置いてしまっている場合、「ジュースにする」という答えは絶対に出てきません。
こちらはラテラルシンキングとは区別されて「クリティカル・シンキング」と呼ばれたり、ロジカルシンキングで掘り下げる前の状態へ一歩戻るので「広義のロジカルシンキング」に捉えられることが多いのですが、いずれにしても前提を疑うことで解決する問題は意外と多いものです。
逆にして考える
こちらも文房具の例。
今ではどこの会社のデスクにもポストイットが置かれていると思いますが、実は元々これは失敗作でした。
強力な接着剤の研究を行っていたところ、たまたま「簡単にはがれる」接着剤が生まれたのです。
普通なら失敗作として捨てるところでしょうが、この「簡単にはがれる」という性質を逆に利用して聖書に栞のような形で貼るようになったのが、ポストイットの誕生秘話です。
また、表現を逆にして考えるというのも有効です。
例えば「値段が高い」と批評の商品であれば、「高級感がある」とか「お値段相当の」という表現を使えば印象はかなり違うはずです。
洋服でも一度展示されてしまってそのままでは売れない商品を「アウトレット」と称して安く販売したりしていますね。
組み合わせる
今までになかった斬新なアイデアがぽんぽんと出てくればそれに越したことはありませんが、そんな天才はなかなか世の中には存在しません。
それどころか、実は世の中で「革新的」ともてはやされるものは既存の技術を組み合わせて作られたものが意外にも多いのです。
例えば僕の好きなアップル社。
スティーブ・ジョブズは大学を自主退学した後も「カリグラフィー」という様々な書体を扱う授業に潜り込み勉強をしていました。
そして、「パソコンでも様々なフォントを使えたら楽しいに違いない」と思い、今では当たり前となった文字フォントの変更機能をパソコンに組み込んだのです。
さらにiPhoneも実は既存の技術をうまく組み合わせたものです。
iPhoneの前でも「電話」「インターネット」「音楽プレーヤー」は存在しましたが、スティーブ・ジョブズはこれらを全て組み合わせて一つのデバイスとしてリリースしました。
もちろんそれ以外にも「ボタンを一つだけにした」など様々なものがありますが、基本的には「組み合わせ」により生まれたプロダクトです。
ロジカルシンキングとラテラルシンキングを使い分けよう
ロジカルシンキングは万能ではありません。
ロジカルシンキングではどうしても思考が内側に向きがちになり、考えが狭くなりがちですが、そんな時はラテラルシンキングを用いて既存の箱の中から抜け出せないか考えてみましょう。
僕個人としてはまずはロジカルシンキングで考え、それでうまくいかなそうだったらラテラルシンキングを使って考えることを意識しています。
ロジカルシンキングと違って、ラテラルシンキングは身につけるのがなかなか難しいですが、本当に「頭がいい」と呼ばれる人はこの2つを状況に応じてうまく使い分けています。
どちらか一方に偏ることなく、ぜひバランスの良い思考を心がけていきましょう。