東芝倒産の可能性は?国が助けるのか?2017年の動向に注目
今経済界で最も大きなインパクトのある出来事と言えば東芝の巨額損失問題。
そもそもは2015年の春頃に発覚した粉飾決算から始まるこの問題ですが、その後東芝が買収した原子力発電関連の会社の不正がまたもや発覚し、2017年の2月には東芝が東証一部から東証二部に降格となること見通しとなりました。
今では「東芝は倒産するんじゃないか?」という疑惑まで持ち上がっていますが、一体東芝はどうなってしまうのでしょうか。
東芝の不正会計から倒産騒動までの経緯
東芝の過去2年分の株価推移
画像出典:Yahoo!ファイナンス
ことの発端は2015年の春頃発覚した東芝の粉飾決算。
2008年度第1四半期から2014年度第3四半期(2008年4月~2014年12月)までの6年9カ月間で、計1518億円もの利益を過大に計上していたことが発覚しました。
これを受けて、東芝の歴代3社長が辞任を発表。
全取締役16人のうち、8人が引責する異例の事態となりました。
ここで事態は一応のところ収束するかに見えましたが、今度は数千億円規模にも及ぶ「原子力事業の巨額損失」が発覚し、またもや東芝は瀬戸際に立たされることとなりました。
問題が起きたのは東芝の子会社である原子力発電関連企業の米ウエスチングハウスが買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスターという会社。
2015年当時買収した際には、8700万ドルの事業価値があると思われていたそうですが、その査定が非常に甘かったせいで実は数千億円の損失リスクがあることが発覚、東芝は新たに数千億規模のマイナス計上を強いられることになりました。
元々東芝は原子力発電事業を一つの柱として事業を展開する予定でしたが、2011年の東京電力福島第1原発事故の影響で世界が脱原発の方向に。
その結果として粉飾に手を染めてしまい、さらには安全規制が強化された結果、米国で建設中の原発のコストが膨れ上がり、CB&Iストーン・アンド・ウェブスターの資産価値が低下したというわけです。
2015年に発生した粉飾により2015年度の東芝の最終赤字は4600億円の赤字。
その後、今回の原子力発電事業のマイナスで2016年度も約5000億円程度の赤字が予想されており、東芝は東証一部から二部へ降格となることがほぼ決定となりました。
2017年東芝に倒産の可能性はあるのか?
こうした巨額の赤字や東証からの格下げに伴い、巷では「東芝は倒産するのではないか?」と噂されています。
確かにこれほど次々と不正が発覚し、連日悪いニュースが取り上げられては無理もないでしょう。
ですが、そもそも、「倒産」とは一体なんなのでしょうか?
定義について調べてみると、法律的にしっかりと決まった定義はないのですが、東京商工リサーチのHPに以下のような記載がありました。
「倒産」とは、企業が債務の支払不能に陥ったり、経済活動を続けることが困難になった状態を指す。
出典:東京商工リサーチ
例えば、会社が何か商品やサービスの購入をした際には、通常は「買掛金」という形で購入先に対して「このお金はいついつまでに支払いますよ」という債務を負います。
倒産とはものすごく簡単に言えば、こうした債務を履行することができずに、取引先にお金を支払うことができなくなったり、銀行から借り入れたお金を返せなくなった状態のことです。
実際にはこうした状態になる前に、企業が破産手続、再生手続、更生手続をした時点で倒産ということがほとんどです。
では東芝はこの先こういった状態に陥る可能性はあるのか。
実際のところ現在の東芝に残されている策と言えば、
- 銀行に泣きつき援助を請う金融支援
- 事業の売却による資金の確保
- 国からの援助
くらいでしょう。
しかし、銀行からの援助に関しては銀行もボランティアでお金を貸しているわけではないので、こんな採算が取れなさそうな案件に出資をするほど融資基準が甘いわけがありません。
それどころか2015年に発覚した東芝の不正会計問題を巡り、株価の下落で資産が目減りしたとして、三菱UFJ信託銀行など複数の信託銀行が東芝に対して損害賠償請求訴訟の準備をしていることも分かっています。
さらに事業の売却に関しても実は東芝は2015年の粉飾決算時に医療、家電など目ぼしい事業はすでに売却してしまっています。
残っているものは半導体事業くらいですが、これを売却するとなれば東芝本体には原発事業くらいしか残らないことになり、巨大企業の体裁を維持することはできなくなりますので、これはもう「東芝」という名前が残っているだけで事実上の倒産と捉えても良いのかもしれません。
となると最後の手段は国からの援助ですが、今回の件に関してはこれも望めません。
東芝の倒産は国が助ける?
こうした大きな企業はピンチに陥ると話に出てくるのが「大きすぎて潰せないから国が助けるんじゃないか?」ということ。
実際、記憶に新しい2010年のJAL(日本航空)の経営破綻の際には、当時に政権を握っていた民主党が3500億円もの公的資金投入や、5000億円の債務放棄措置など経営再建の後押しをしています。
しかも、V字型回復した後も納税がゼロという異例のサポートつきで。
どう考えてもありえないほどの優遇ですが、今回の東芝の件でもこのように公的なお金が使われることになるのでしょうか?
僕自身の意見を言うと、今回の東芝の件で国が税金を支払って東芝を助ける可能性は限りなく低いと見ています。
第一の理由としてJALの場合、潰れると独占禁止法に触れる恐れがあったから。
アメリカは航空会社がいっぱいありますが、日本は大きな会社はANAとJALの2つしかないためにJALを潰してしまったらANAの独壇場となってしまいます。
一方で東芝の場合は潰れたところでこうした独占禁止法に抵触する恐れはほぼありません。
第二の理由として、JALの破綻に関しては国にも責任の一旦があったと思われるから。
JALはもともと国営企業であり、道路や海路や空路といったインフラは、国家の基礎になるため儲からない路線であっても飛ばせと国は命令してきました。
そういった国からの無茶な要望にも答えてきた経緯があるため、国もJALを助けなければならないという大義名分があったのでしょう。
また、空の玄関が潰れて機能しなくなるとなれば、人、モノの輸送は大打撃をうけるため、東芝が潰れるどころの騒ぎではありません。
シャープという日本の高度経済成長を牽引してきた一流企業であっても、現在国は全く助けようとする気がないことを見ればこれは一目瞭然ですね。
第三の理由として、東芝の問題は発端が不正会計だということ。
JALが経営破綻に追い込まれるきっかけとなったのはリーマンショックです。
しかし、東芝の場合はそうした外部要因ではなく、粉飾による内部での不正がそもそもの発端です。
いくら東芝が潰れては経済が回らなくて困るとなっていても、果たして不正から燃え上がったこの問題の解決のために税金が使われるとなったら国民はそれを許すでしょうか。
こうした理由があるので、もし仮に東芝に公的なお金が入るとなれば、どう考えても東芝役員が政治家に賄賂を渡すなど不自然な動きがあったとしか思えません。
大企業だから安心の時代ではない
実は僕は2015年の4月、東芝の不正が発覚するちょうど1年前あたりに新卒で就活をしていました。
東芝も受けていて、一次面接では英語を使うと聞いて、そのためにいろいろと対策をしていた頃が懐かしいです。(結局東芝の前に第一志望が受かったので選考には辞退しましたが)
説明会にも何度か足を運んだことがあるのですが、まさかあの東芝がたった1年、2年程度でこんなことになるとはその時は思いもしませんでした。
東芝はグループで19万人もの従業員を抱える日本きっての大企業です。
しかし、粉飾決算以降には1万人規模でリストラ、今回の損失ではおそらくそれ以上のリストラが決行されることでしょう。
こうしたことを考えると、良い大学に入って良い会社に勤めるだけが安定ではないと思い知らされます。
大事なのは、仮に自分の会社がこのような潰れる寸前まで追い込まれたり、ある日突然リストラをされたとしても、自分の力で食べて生きるだけの能力を身につけること。
今回の不正の問題で、「もう東芝に入ったから定年まで一生安泰」と思って自分を磨くことをしてこなかった人たちは、東芝を追い出されても次の就職先はないでしょう。
しかし、一方で大企業に入っても油断せずに自分の頭で考えてしっかりとスキルを磨いてきた人であれば、こうしたことがあってもすぐに職が見つかるか、起業するという選択肢もあります。
「例え明日自分の会社が潰れてしまっても、自分の力で食べていけるだけの能力を身につけること。これこそが真の安定だ」
これは僕の大学の先輩が言っていた言葉ですが、この言葉の意味をひしひしと感じます。
今一度会社に依存せずに生活をするためにはどうした良いのか、しっかりと考えてみましょう。
僕の場合はそれは自分で起業をすることでしたが、起業するにしろ、会社員として働くにせよ、何よりも大事なのは自己研鑽を怠らないこと。
たゆまぬ努力こそが真の安定へ達するための一番の近道です。